「童話物語」11.10.13
向山貴彦・著/宮山香里・絵(幻冬舎・刊/2000円税別)
先日、本屋さんでタイトルと表紙の絵に魅かれて手にとりました。ペチカという女の子と、フィツという妖精とのRPG(ロール・プレイング・ゲーム)のようなストーリーなのですが、545ページという大部にもかかわらず、飽きることなく一気に読んでしまいました。ストーリーは表紙の帯にもあるとおり、宮崎駿の「風の谷のナウシカ(コミック版)」を思い出させられますが、細部のエピソードまでよく描き込まれていて、なかなか読みごたえのあるハイ・ファンタジーだと思います。
「子どもへのまなざし」11.9.5
佐々木正美・著(福音館書店・刊/1700円税別)
私は、本を読んで気に入った箇所があると付箋をつけます。この本には40枚以上の付箋がつきました。著者は児童精神科医で、この本は保育園の先生方への講義をまとめられたものですが、全編に著者の子どもへの温かいまなざしが感じられます。
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親のほうが「それでいいんだよ、それでいいんだよ」といいながら、親のやるべきことをやってさえいれば、たいていは不足のない子に育っていくのだと思います。人の善意を信じられる子どもは、基本的には、親にそのように思われ、育てられた子どもだと思います。
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私たちは今日、面倒なことはなんでも、お金ですませてしまおうとする習慣が身についてしまったものですから、思いやりのような、親が自分の家庭でやらなければならない人間らしい面だけは、子どもの心に育てられなくなってしまいました。ですから、お金で買う便利さになれてしまって、多くの人は、なかなか便利にならない育児にいらだっているのが現状です。
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子どもとのいまの時間をたいせつに
本来、親が育児する喜びというのは、二つの観点があると思うのです。ひとつは子どもに期待できる喜び、もうひとつは、子どもを幸せにできる喜びです。このときに、できることなら、子どもを幸せにできる喜びのほうを、ずっと大きくもって、子どもに期待する喜びは、小さくしていただきたいと思います。
「心に緑の種をまく 絵本のたのしみ」11.8.10
渡辺茂男・著(新潮社・刊/1800円税別)
くまくんの絵本シリーズの作者として知られる、渡辺茂男さんの絵本への思いが綴られた本です。単なるおすすめ絵本の紹介というのではなく、渡辺茂男さんと、その絵本とのかかわりが書かれています。とりあげられている絵本は有名な絵本ばかりですから、ほとんどすでに知っている絵本だと思いますが、たとえば、「かもさんおとおり」でしたら、作家が、かもを観察するために、一緒にお風呂に入ってまで生活したことなど、その本にまつわるエピソードがその絵本に近いところで書かれていて、その本への興味をよりいっそう高めてくれます。
渡辺茂男先生のご好意で、この本の冒頭の章から「鼓子の読書初め」を当園のホームページに転載させていただくことができました。「鼓子の読書初め」は、渡辺先生のご長男、鉄太さんの育児体験を綴ったものです。父親の育児参加の例としても、とてもほほえましく、私は好感を感じています。